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- 2024/04/30 掲載
「アンパンマン」が安定収益すぎる理由、ハローキティに並ぶ最強キャラの壮絶誕生秘話
連載:キャラクター経済圏~永続するコンテンツはどう誕生するのか(第22回)
東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、大学での研究と経営コンサルティングを行っている。『推しエコノミー「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)、『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)など著書多数。
“ある市場”のシェアは圧倒的? アンパンマンの実力
子供向けキャラクターとして絶大な人気を誇る『それゆけ!アンパンマン』の実力は、あらゆる調査データを見ると明らかだ。また、商品所有度は27.2%で5位(「ミッキーマウス」「リラックマ」「ハローキティ」などに続き日本5位)、「玩具」キャラクターカテゴリーで見ると、「鬼滅の刃」「ポケモン」をおさえての堂々1位となっている。
何よりすごいのは、幼少年齢における寡占率だ。0~2歳では男児47%/女児49%、3~4歳は男児13%(2位)/女児14%(1位)となっている。「ミッキーマウス」「トーマス」「ハローキティ」などを大きく抑え、「3歳までは誰もが必ずアンパンマン」という不動の市場を作り上げているのだ。
乳幼児向けキャラクターでここまで高いシェアを誇るキャラというのは他国でもあまり類例がない。しかもそのポジションは30年にわたって絶対的なものである。
アンパンマンの初登場は1968年だが、単体絵本作品として登場したのは1973年。さらに1970年代後半のミュージカルを通じて普及し、「国民的キャラ」となったのは1988年の日本テレビでのアニメ化以降の話だ。1996年アンパンマンミュージアム1館目(高知県)設立も含め、実はこうして幼少期向け市場のシェアを伸ばしはじめたのは1990年代と、意外にも最近のことなのだ。

作者・やなせたかし氏は当時すでに70歳超え、完全なる遅咲きであった。彼自身が子供時代に迷子になり、お金がなく空腹で苦しんでいたときに友達と友達の母と偶然出会い、電車で帰っていた道すがら与えられたアンパンが死ぬほどおいしかった。今回、やなせたかし氏の著書『アンパンマンの遺書』(岩波現代文庫)の内容などをもとに、そうした作者の「アンパンに助けられた原体験」と自殺未遂、両親・弟との離別、戦時の飢餓状態など、壮絶な人生の中から生まれたこのヒーローについて分析する。
作者・やなせたかし氏の壮絶な人生
1919年に東京で生まれたやなせたかし氏は、4歳のときに新聞社に勤めた父が単身広東で客死(33歳)、その後、やなせ氏は母・祖母と3人で借家暮らし、やなせ氏の弟・千尋は開業医の伯父の養子として引き取られる。やなせ氏が小学2年生の時に母は再婚し、やなせ氏も伯父に引き取られることになる。そのときかけられた「あなたは身体が悪いから、大きくなるまで病院であずかってもらうのよ」という言葉を信じていたという(注1)。
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