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  • 2022/12/26 掲載

『平成仮面ライダー』シリーズで一番稼いだのは? 売上急増させた2つの「変身」

連載:キャラクター経済圏~永続するコンテンツはどう誕生するのか(第7回)

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1970年に放送がスタートした『仮面ライダー』シリーズは、誕生から50年経つ現在も人々から支持され続ける大人気コンテンツだ。1990年代には「スーパー戦隊シリーズ」の人気上昇の陰に隠れ、人気が大きく落ち込む時期もあったが、2000年代に再ブレイクを果たす。その復活劇の裏には、2度の大きな“変身(コンテンツのテコ入れ)”があったのだ。今回は、「仮面ライダークウガ」(2000年)から「仮面ライダー リバイス」(2021年)までの20年間、各シリーズがどれほど稼いだのかを紹介しつつ、仮面ライダーシリーズの凄さを解説したい。
執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山 淳雄

エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山 淳雄

東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、大学での研究と経営コンサルティングを行っている。『推しエコノミー「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)、『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)など著書多数。

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『仮面ライダー』というコンテンツは、どれほどのお金を生み出しているのか? なぜ、これほど人々を惹きつけるのか? その秘密に迫る
(写真:筆者撮影)

人気が落ちない『仮面ライダー』の特殊性

 1971年に生まれた仮面ライダーは、主人公の本郷猛(主演:藤岡弘)が、世界征服をたくらむ悪の秘密結社ショッカーに捕らえられ改造手術を受けてしまうところから始まる。しかし、大脳を改造されてしまう前に奇跡的に救われたことで、正義の心を残しながら、改造によって手に入れた怪人と同種の力で悪と戦うことになる、といったストーリーである。

 仮面ライダーの「サイボーグとしての自身に苦悩する」というテーマは、都市化・工業社会化が進む中、公害や自然破壊、人間の部品化といった「科学の力」がもたらすダークサイドに人々が気づきはじめた社会背景が関係している。また、悪をもって悪を制する矛盾と葛藤の中に生きる「ダークヒーローの原型」とも言える。

 もともとこのテーマは、米ソ冷戦やベトナム戦争に影響を受けた漫画家・石ノ森章太郎氏が『サイボーグ009』(1964)から登用してきたテーマであり、それは石ノ森氏のアシスタントだった永井豪氏の作品『デビルマン』(1972)にも引き継がれ、『寄生獣』(1988)、『ベルセルク』(1989)、『ARMS』(1997)、『進撃の巨人』(2009)へと発展していく。

 東映は、この石ノ森氏の才能にテレビ映像の原作をも託し、現在に至るまで50年以上にわたって原作者としてクレジットされ続けている。

 そんな仮面ライダーは、現在も人気は衰えることのないコンテンツとなっている。たとえば、あるキーワードがGoogle上でどれだけ検索されているのかを確認できる「Googleトレンド」の推移を見ると、仮面ライダーは、検索ボリュームにおいて「プリキュア」「ウルトラマン」「スーパー戦隊」などのシリーズ抜かれたことがない。

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図表1:仮面ライダー、スーパー戦隊、ウルトラマン、プリキュアの注目度の変遷
(出典:Googleトレンドより筆者作成)

 なお、仮面ライダーの競合コンテンツとなる「スーパー戦隊シリーズ」は、主人公が1体しかいない仮面ライダーの構成を上位互換で改良して作られたIPだ。1990年代には仮面ライダーの倍以上の売上を誇り、北米でも空前のヒットを記録した作品である。

 この時期、スーパー戦隊シリーズの影に隠れ、仮面ライダーの人気は大きく低迷することになる。しかし、2000年代に奇跡の復活を遂げ、その後20年以上にわたり、バンダイの超主力コンテンツである「機動戦士ガンダム」と肩を並べるほどの玩具売上を築き続けるようになるのだ。

 一度は「スーパー戦隊シリーズ」に抜かれ低迷した仮面ライダーは、どのように復活を遂げ、バンダイの超主力コンテンツの地位まで上り詰めたのか。

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「平成仮面ライダー」一番稼いだシリーズは? 記事の後半で各シリーズの売上(筆者試算)を解説します

作品が評価される理由、“感動”を生み出す装置とは?

 仮面ライダーの成功は、ヒーローとしての描き方と同時に、「特撮」という撮影技術によるところが大きい。SFX(特殊効果)やVFX(撮影後の視覚効果、1990年代以降に一般化)、CG(コンピューターグラフィック)と混同もされることもあるが、「特撮」自体は東宝の監督として『ゴジラ』(1954)や『ウルトラマン』(1966)を生み出した円谷英二氏による造語である。

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