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  • 2024/10/09 掲載

「要件定義を無くそう!」…不毛な議論を巻き起こす「アジャイル開発への誤解」とは

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多くの企業でDX推進が加速する中、システム開発の手法としてアジャイル開発が主流となった。PwCコンサルティングの調査によると、アジャイル開発手法を展開している企業は72%に及ぶという。そのためか、まずはプロダクトを作ってみようという観点で「要件定義を無くせないか?」という議論が散見される。結論から言えば「現実的ではない」のだが、なぜこのような議論が起きるのか。システム開発に詳しいビープラウドの代表取締役社長、佐藤 治夫氏に、要件定義不要論が大きくなった背景とともに、無くした場合の問題点や要件定義に必要なスキルなどについて話を聞いた。
聞き手・構成:編集部 井内 亨   執筆:行政・ITライター 小池 晃臣

行政・ITライター 小池 晃臣

1993年早稲田大学第一文学部卒業後、ぎょうせい入社。地方行政をテーマとした月刊誌の編集者として、IT政策や産業振興、防災、技術開発、まちおこし、医療/福祉などのテーマを中心に携わる。2001年に日本能率協会マネジメントセンター入社。国際経済や生産技術、人材育成、電子政府・自治体などをテーマとした書籍やムックを企画・編集。2004年、IDG Japan入社。月刊「CIO Magazine」の編集者として、企業の経営とITとの連携を主眼に活動。リスクマネジメント、コンプライアンス、セキュリティ、クラウドコンピューティング等をテーマに、紙媒体とWeb、イベントを複合した企画を数多く展開。2007年より同誌副編集長。2010年8月、タマク設立、代表取締役に就任。エンタープライズIT、地方行政、企業経営、流通業、医療などを中心フィールドに、出版媒体やインターネット媒体等での執筆/編集/企画を行っている。

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要件定義は図の「What」の部分に当たる。ここを無くことはできるのか?
(後ほど詳しく解説します)

「要件定義を無くす」ことは可能か?

1ページ目を1分でまとめた動画
 昨今、DXやアジャイル開発の流行により、「要件定義を無くそう」という声がよく聞かれる。

 佐藤氏によると、要件定義を完全に無くすことは、一般的な開発プロジェクトでは難しい一方で、特定のケースでは要件定義を省略することも可能であるという。

「PoC(概念実証)レベルの開発や、個人レベルなどシンプルなソフトウェア開発であれば、要件定義を行わなくても、とりあえず作ってみて、実際に使い、修正を繰り返す、というケースもあります。たとえば、最近のノーコードツールであるbubbleなどを活用すれば、初期の要件定義を行わずにすぐにプロトタイプを作り、必要に応じて素早く修正できるため、手戻りが極端に少なくなります。このような開発手法では、動作検証を繰り返しながら、最適な形を見出していくプロセスが可能となり、要件定義を省略する選択肢も考えられるわけです」(佐藤氏)

 しかしながら、これらはあくまで例外であり、特に複数人が関わる開発や規模が大きなプロジェクトでは、要件定義の省略は大きなリスクを伴うことになる。さらに、ものづくりにおける基本原則を踏まえると、要件定義の省略は本来の開発プロセスを逸脱する状況に陥りやすい。

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ビープラウド 代表取締役社長
佐藤 治夫氏
エンジニアとして活動を始めて以来、モデリングを中心としたソフトウェアエンジニアリングを実践している。
Xアカウント:https://u6bg.roads-uae.com/haru860
2024年5月から[トレラボ]にて、システム開発に関する自身のノウハウや考え方を記事として発信している。
 佐藤氏は次のように説明する。

「ものづくりには『Why』『What』『How』『Make』という4つの要素があり、まず『Why』では、なぜ作るのか、どのような課題を解決し、どのような価値を生むのかを企画段階で明確にします。次に、何を作るのか=『What』が要件定義に当たります。これを省略することは、何を作るのかを決めないまま開発を進めるということで、ものづくりの原則を無視することになります。たしかに、何を作ればいいのか不明な場合などには、まずとりあえず作ってみようといったアプローチはあり得ますが、通常の開発では非常にリスクの大きい選択です」(佐藤氏)

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『What』=何をつくるのか、が要件定義に当たる
(佐藤氏提供)

 つまり要件定義を完全に無くすことは現実的には難しく、特に規模が大きくなるプロジェクトでは不可欠なプロセスであり、システム開発における基本の一部であると結論付けられるだろう。

 そもそもなぜ、「要件定義を無くすことは可能か?」という議論が起きるようになったのか。 【次ページ】要件定義“不要論”を招く「アジャイル開発への誤解」
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